4K放送が開始してから少し時間が経ち、家電量販店のテレビの売上はほとんどが4Kテレビらしい。
そもそも4Kというのは何なのかと言うと、テレビやスマホ、PCなどのディスプレイは小さな粒(ドット)がたくさん並んで画面を表示している。そのドットの数がフルハイビジョンでは横に1920、縦に1080個並んでいおり、4Kではそのドットの数が2倍になり横に3840、縦に2160個並んでいるのだ。この横の3840という数字が4000に近いということで4Kと名付けられた。実際には160個ほど足りないのだが、細かいことは気にしないのだろう。
さて、ではタイトル通り、現時点で4Kテレビを購入するのは待ったほうが良いというのはなぜかというと、地デジの4K化の話が出てきたからだ。
結論から書くと、おそらく現在の4Kチューナー内臓のテレビやレコーダーでは数年後開始すると思われる地デジ4Kを見ることは出来ない。新しいチューナーを別途買わされることになるだろう。それでも良いというのであれば今買っても問題はないと思う。
なぜ再生できないと思われるかについて話す前に、動画のことについて話そう。
我々はスマホやカメラで撮影したり、テレビを録画したり、PCで画面をキャプチャして生放送したりしているが、その過程で必ず『圧縮』というものが行われている。動画は圧縮しなければ容量が大きすぎてマトモに扱えないからだ。もしフルハイビジョンの動画を30分、一切圧縮しなかったとしたら、条件にもよるが、おそらく容量は30GBや50GBとか、そんな数字になってしまうだろう。それではすぐにデバイスの容量を食いつぶしてしまう。
そこで『出来るだけ画質を維持しながら容量を削減する技術』というのが重要になり、動画を圧縮する技術が生まれた。
この技術は簡単に言えば『ルール通りに動画を圧縮し、ルール通りに再生すれば少ない容量で高画質な動画を再生可能』であり、このルールのことを『コーデック』と呼ぶ。
このコーデックは進化を続けており、年々圧縮率がより高くなっている。圧縮率が高くなると
・同じ容量でより高画質な動画になる
・同じ画質でより容量を少なく出来る
この2つの使い方が出来る
現在、インターネットの世界で主流なのはMPEGという業界が策定した『H264』というコーデックであり、別名を『AVC』と呼ぶ。環境にもよるが、ほとんどの環境でPCで画面キャプチャしたり、スマホで動画を撮影するとこの形式に自動で圧縮されて保存されているはずだ。
しかし、テレビ放送ではこの二世代古いのコーデックである『H262』というコーデックが使われている。なぜH264にしなかったのかというと、単純に地デジ放送の規格が策定された時にはまだH264がなかったからだ。
では、なぜ今はH264に放送方式を変えないのか?というと、古いテレビにH264を再生する機能がないからだ。先程も言ったように、コーデックはルール通りに圧縮したものをルール通りに再生しなくてはならない。古いテレビではルール通りに再生する機能がないのだ。
そしてBS・CS4K放送ではH264の次世代コーデックであり、圧縮率の高い『H265』別名『HEVC』が使われている。先述の通り、古いテレビには新しいコーデックを再生する機能がないため、テレビの買い換えを余儀なくされたのだ。しかし、初期の4Kテレビには『画面は4Kだけど、H265を再生する機能がない』とひどいものが売られていたため、4K放送開始前には別売りのチューナーを購入し、H265の再生機能を外付けする必要があった。
そしていよいよ地デジの話。地デジはBS・CSと比較すると、送信できる容量が少ないため、H265をもってしても4K放送を行うことは出来ず、次世代コーデックを待つ必要があった。しかし東京オリンピックが2020年には開始される予定だったので、それに間に合わせようと2019年中にはBS・CSだけでも先にH265を使って規格を策定し、放送を開始したのだ。
そして2020年になり、コロナ渦の中でより圧縮率の高い次世代コーデックが登場した。『H266』別名『VVC』である。そしてついにこれを使って地デジ4Kの規格策定に向けて業界が動き出した。
しかし、当然のことながら、現行のTVにはH266を再生する機能はない。そのため、おそらく地デジ4Kが放送開始したとしても現行のTVでは地デジ4Kを見ることは出来ず、別途チューナーを買わされることになるのだ。
PS5に向けて4Kテレビがほしいとか、地デジはそもそも見ないとか、そういう理由であれば買っても良いと思うが、もし『今4Kテレビを買っておけば地デジ4Kも見れるだろうし安心だな』と思ってる人は要注意。という話である。
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